【診断の日、世界が止まった】不安だった出産までの日々と、わが家の幸せな今

「ねえ……今から病院に来れる?」
2021年7月30日、昼下がり。
妻からの電話は、いつもと変わらないけだるい午後に、突然かかってきた。
でも、声が違った。
小さく、かすれて、どこか不安そうで。
―嫌な予感がした。
今日、妻は産婦人科で妊婦健診を受けていたはずだ。
考える間もなく、その予感は当たった。
「赤ちゃんの心臓に……異常があるかもしれないって」
あの瞬間から、時間が止まったようだった。
赤ちゃんに病気があると診断されたとき、
私たち夫婦は何をどう考えればいいのか、わかりませんでした。
スマホで検索を繰り返し、夜が来るのが怖くてたまらなかったあの日——。
この記事では、そんなわが家がどのようにその現実を受け止め、
どんな心の変化を経て、「いまの幸せ」にたどり着いたのかを、
実体験としてありのままにお伝えします。
この記事で皆様にお伝えしたいこと
同じように、診断直後で不安や孤独に包まれているパパやママへ。
わたしの体験が、ほんの少しでも支えになればうれしいです。
「大丈夫」なんて軽く言えません。
でも、あなたの未来が真っ暗ではないことを、私は信じています。

診断の日、世界が止まった

妻からの電話のあと、私は急いで病院へ向かいました。
診察室で医師から聞かされたのは、エコー検査で「心臓に逆流が見られる」「通常より大きく肥大化している」という事実。
いまの病院ではこれ以上の診察は難しく、大学附属病院へ転院することが決まりました。
その日は何も考えられず、ただ妻の隣に座り、彼女の涙を見つめていました。
頭の中は真っ白。現実感がなく、ただひたすらにスマホで検索を繰り返す時間が過ぎていきました。
「赤ちゃん 心臓肥大」「余命」「死産」——
検索すればするほど、希望は見つからず、怖くなる一方でした。
どうして、よりによってわたしたちに、こんな試練が与えられるんだろう——。
思えばこの日から、長男が生まれるまでの間、私は現実を直視するのが怖くなっていたのだと思います。
仕事と趣味の釣りに没頭し、日常を「何か」で埋めることで、気持ちを保っていました。
不安に押しつぶされたくなかった。
けれど、心のどこかでは、その不安から目をそらしていただけだとも思っていました。
診断、その後
後日、大学病院で改めて診察を受けました。
医師からは、こう告げられました。
「心臓が肥大していて、他の臓器を圧迫しています。
お腹の中にいるうちは大丈夫ですが、外に出たら……わかりません」
その言葉を聞いても、何を意味するのか、すぐには理解できませんでした。
理解したくなかった、というのが本音かもしれません。
不安で、怖くて、でも親として何かしなければという焦りだけが募る数日間。
そんな中でも、お腹の中にいる我が子は、生きている。
その事実だけが、唯一、私を現実につなぎとめていたような気がします。
ここから障がい児との暮らしが始まる

そして、そこから始まりました。
私たちの「障がいのある子どもとの暮らし」が。
不安も、涙も、たくさんありました。
けれど今、振り返って言えるのは——
あの日の診断が、すべてを奪ったわけではなかったということです。
戸惑いながらも、前に進むしかなかった日々。
心を落ち着ける間もないまま、検査が続き、
それでも、お腹の中で育ち続ける命が、確かに私たちを支えてくれていました。
この記事は、わたしたちの物語のはじまりです。
次回は、出産に至るまでの時間、そして心の揺れや準備の日々についてお話したいと思います。
もし、あなたが今、同じように戸惑いの中にいるのなら。
その気持ちは、決してひとりではありません。
わたしたちの体験が、少しでも誰かの支えになりますように。

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